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サロンオーナーが知っておきたい人事労務 【第5回】残業代のルール

スタッフを所定労働時間(就業規則や雇用契約書に定めている労働時間)を超えて働かせると、残業代を支払う必要があります。
そこで今回は、残業代とは何か、残業代のルールや計算方法について説明いたします。

① 残業の種類

労働基準法で決められた「1日8時間、週40時間」という労働時間を法定労働時間といいます。
一方、就業規則や雇用契約書で決めている労働時間を所定労働時間といいます。

1) 法定内残業・・・所定労働時間超え、法定労働時間以内の残業
2) 法定外残業・・・法定労働時間を超えた残業

(例)
「始業11:00 終業19:00(休憩時間1時間)」が所定労働時間のエステサロンであれば、1日の所定労働時間は7時間00分になります。
休憩時間を除いて9時間働いた日の場合は、法定内残業1時間と法定外残業1時間をしたということになります。

なぜ、法定内残業と法定外残業を分けて考えるのか、それは残業代の違いにあります。
法定外残業は時間外割増賃金の支払いが義務付けられていますが、法定内残業は時間外割増賃金の支払い義務はありません。

サロンオーナーが知っておきたい人事労務 【第5回】残業代のルール

時給1,400円のスタッフであれば、以下のように法定内残業か法定外残業かで支払う残業代が変わります。

法定内残業代・・・1,400円(時間)
法定外残業代・・・1,750円(時間)

※法律で義務付けられている最低限の残業代で計算をしています。

② 残業代の割増ルール

労働基準法で、義務付けられている割増賃金の支払いには、以下の3種類があります。

1. 時間外労働⇒割増率2割5分以上(月60時間を超える時間外労働は5割以上)

法定外残業のことです。月60時間以内の法定外残業は2割5分以上の割増賃金、月60時間を超える法定外残業は5割以上の割増賃金を支払わなければいけません。

2. 休日労働⇒割増率3割5分以上

法定休日に働かせた場合は休日労働になります。法定休日以外の休日(法定外休日)に働かせた場合は、休日労働ではなく法定内残業(通常の給与)または法定外残業(2割5分以上の割増賃金)のどちらかになります。
労働基準法では1週間に1日(または4週間中4日)の休日を与えなければいけないと義務付けられています。 この与えなければいけない休日を法定休日といいます。 法定休日を具体的にいつとするのかは会社で決められるので、例えば「店休日の〇曜日が法定休日」とすることも可能です。

3. 深夜労働⇒割増率2割5分以上

午後10時から午前5時の間に働かせた時間を「深夜労働」といいます。

サロンオーナーが知っておきたい人事労務 【第5回】残業代のルール

 

③ 具体的な計算方法

(例)
1時間当たりの賃金:1,400円
法定内残業:10時間
法定外残業(時間外労働):20時間
休日労働:8時間 ↓ ↓ ↓ 法定内残業代:1,400円×10時間=14,000円
法定外残業代:1,400円×1.25倍×20時間=35,000円
休日手当:1,400円×1.35倍×8時間=15,120円 合計:64,120円

サロンオーナーが知っておきたい人事労務 【第5回】残業代のルール

 

④ その他の注意点

1. 残業時間は1分単位

1日ごとに5分未満や15分未満の残業時間を切り捨てるようなことはできません。 1日ごとの残業時間は1分単位での計算が必要です。 一方、スタッフが有利になるような切り上げをすることは問題ありません。

2. 法定労働時間を超えて働かせるには手続きが必要

スタッフに法定労働時間を超えて働かせたり、法定休日に働かせたりするためには、36協定を労働者(スタッフ代表者)と使用者(エステサロンオーナー)で締結して、労働基準監督署に届出をする必要があります。

3. 早出残業も残業代の支払いが必要

終業時間後に働かせる時間だけでなく、始業時間より早く働かせた時間も残業代の支払が必要です。

4. 残業代のルールが異なる変形労働時間制

1ヵ月単位の変形労働時間制、1年単位の変形労働時間制、フレックスタイム制などの変形労働時間制で働くスタッフは通常とは残業時間のカウント方法が異なります。

今回は残業代の基本的なルールをご説明しました。
サロン経営でウェイトが高い経費は人件費ですので、残業代の見込み額も含めてスタッフの方の労働条件を決めるためにはルールの理解が重要になります。

また、退職後に残業代の請求をスタッフが求めるケースもあります。
未払い賃金を請求できる期間は3年ですので、既にスタッフを雇用されているサロンオーナーさんは、現在の残業時間の集計や計算方法が誤っていないかもぜひ確認ください。

 

《著者紹介》
社会保険労務士 沖津利可

2012年社会保険労務士資格取得。全国健康保険協会、社会保険労務士法人の勤務経験を経てりか社労士事務所を開業。中小企業の利益拡大につながる男性育休取得促進コンサルティングも行っています。
りか社労士事務所ウェブサイトはこちら https://sr-rika.com/