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サロンオーナーが知っておきたい人事労務 【第3回】初めてスタッフを雇うとき~労災保険・雇用保険~

サロンをオープンして、初めてスタッフを雇うこととなったとき、何をしなければいけないか?
今回は労災保険・雇用保険の手続きについて、ご説明いたします。

① 労災保険・雇用保険とは?

 

第3回労災保険と雇用保険

少し固い言い方にはなりますが、それぞれの保険は以下のような制度です。

【労災保険】

業務上の事由又は通勤による労働者の負傷・疾病・障害又は死亡に対して労働者やその遺族のために、必要な保険給付を行う制度。

【雇用保険】

労働者が失業した場合などに必要な給付を行い、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに再就職の援助を行うことなどを目的とした雇用に関する総合的な機能をもった制度。

労災保険では仕事による怪我の治療費や、怪我のため働くことができない期間の休業補償などが給付されます。
雇用保険では、失業した際の基本手当(失業給付)や育児休業給付金などの代表的な給付があります。
労災保険と雇用保険をまとめて【労働保険】といいます。

第3回労災保険と雇用保険

 

② 必ず加入しなければならないのか?

労働保険(労災保険・雇用保険)は、原則として 1人でもスタッフを雇っている事業は、業種の規模の如何を問わず、法人・個人に関係なく、すべての事業に適用されます。

なお、労災保険における労働者とは、「職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者」をいい、 アルバイトやパートタイマー等の雇用形態は関係ありません。
1人でもスタッフを雇えば、労働保険の強制適用(加入)となるわけです。

強制適用の例外は、個人経営で労働者数5人未満の農林水産の事業なので、エステサロンでは1人でもスタッフを雇えば、強制的に適用(加入)となります。

 

③ どのような手続きが必要なのか?

 

  必要な手続き    提出期限 提出先 添付書類
1 労働保険 保険関係成立届 スタッフ雇用後10日以内  労働基準監督署  会社の登記簿謄本
(個人事業主は住民票)
2 労働保険 概算保険料申告書 スタッフ雇用後50日以内 労働基準監督署、労働局、日本銀行 なし
3 雇用保険適用事業所設置届 雇用保険被保険者となるスタッフを雇用後10日以内 ハローワーク 1の控書類、会社の登記簿謄本、サロンの場所が賃貸であれば賃貸借契約書
4 雇用保険被保険者資格取得届 3と合わせて提出 ハローワーク 雇用契約書等

※「スタッフ雇用後」とは、「初めてスタッフを雇い入れた後」です。

3と4は雇ったスタッフが雇用保険被保険者となる働き方をする場合に、手続きが必要となります。

【雇用保険被保険者になる働き方かどうかの判断基準】

  • 週の所定労働時間が20時間以上である
  • 31日以上引き続き雇用されることが見込まれる

この2点を満たす働き方をするスタッフは雇用保険被保険者になるので、3と4の手続きも必要となります。

 

④ 複数の店舗がある場合、1店舗だけで手続きをすればいい?

それぞれの店舗ごとで手続きが必要です。
新しく店舗をオープンし、その店舗でスタッフを雇うのであれば、新店でも手続きをすることになります。

 

➄ もし手続きをしていなかったら、どうなるのか?

労働保険の成立手続を行うよう労働基準監督署から指導を受けたにもかかわらず、成立手続を行わない事業主に対しては、行政庁の職権による成立手続および労働保険料の認定決定が行われます。
その際は、さかのぼって労働保険料が徴収されるほか、あわせて追徴金が徴収されます。

また、事業主が故意または重大な過失により労災保険に係る保険関係成立届を提出していない期間中にスタッフが業務上のケガをし、労災保険から給付が行われた場合は、遡って労働保険料を徴収(併せて追徴金も)されるほかに、労災保険給付にかかった費用の全部または一部が徴収されることになります。

「うっかり忘れていた…」では済まされないので、初めてスタッフを雇う時には労働基準監督署やハローワークでの手続きを忘れないようにお気を付けください。

* * *

次回もお楽しみに!

《著者紹介》
社会保険労務士 沖津利可

2012年社会保険労務士資格取得。全国健康保険協会、社会保険労務士法人の勤務経験を経てりか社労士事務所を開業。中小企業の利益拡大につながる男性育休取得促進コンサルティングも行っています。
りか社労士事務所ウェブサイトはこちら https://sr-rika.com/