エステティックJIS化について – 業界の健全化と消費者保護を目指して

「エステティックJIS」開発についてメディア向け説明会開催

2025年6月27日、特定非営利活動法人日本エステティック機構により、「エステティックJIS」の開発についてメディア向け説明会が開催されました。

特に脱毛施術において消費者トラブルが急増する中、業界の健全化と消費者保護を目的とした同規格は、2026年(令和8年度)の施行を目指しています。
同機構からの発表内容をもとに、なぜJIS化が必要なのか、どのようなメリットがあるのかをまとめました。

JIS(日本産業規格)とは

JIS(日本産業規格)は、日本の国家規格として製品やサービスの品質・安全性を保証するための統一基準です。
従来は「日本工業規格」として主に工業製品を対象としていましたが、2019年7月の法改正により「日本産業規格」に名称が変更され、標準化の対象にデータ、サービス、経営管理等が追加されました。
この改正により、これまで工業製品に限定されていた標準化の枠組みが、サービス業や商業分野まで拡大されることとなり、エステティック業界のような対人サービス業でもJIS化が可能になりました。

なぜエステティックJIS化が必要なのか

日本のエステティック業界は本来、長年培った巧みな手技、高性能な化粧品を使用するトリートメント、そして丁寧な接客という「日本式エステティックサービス」として国際的に高い評価を受けています。

しかしながら、エステティックサービスに対する消費者相談件数を見ると、2022年度には22,323件という非常に多くの相談が寄せられています。これは2016年度の7,019件から約3倍に増加しており、特にコロナ禍以降、他業種から安易にエステティック業界に参入する事業者が増えたことが原因とされています。

新規参入事業者による消費者トラブルの増加により、国内のサービス技術やサービス提供を支えるマネージメントの質の低下が進行しており、業界全体の信頼性に影響を与えています。

なお、同機構では、経済産業省の指導のもと、2007年からエステティックサロン認証制度を実施してきました。しかし、この認証制度は業界内の自主基準という評価にとどまっており、エステティック業界に隣接する他業界や消費者からの信頼を支えるものとしての位置づけには至っていません。

エステティックJIS化によるメリット

「エステティックJIS」(正式名称:エステティックサロンのマネージメント及び品質管理に関する一般要求事項)が制定されることで、様々なメリットが期待されます。

まず、JISマークをサロンに掲げることにより、消費者に対して「安全で安心」なサロンであることの証明ができるようになります。
無形のサービスであるため、顧客が良し悪しを判断しにくく、提供者との間でも認識のずれが生じやすいエステティックサービスについて、標準化によるサービス品質・内容の明確化が実現されます。

次に、エステティック産業を日本のサービス輸出の資源として活用できるようになります。インバウンド旅行者へのサービス消費のコンテンツとして大きく成長させることが可能になり、日本の美容市場における国際的地位をさらに強化できます。

また、損害保険やクレジット等の金融・保険業をはじめ、デベロッパーを含む大規模小売業、マスメディア等の情報通信産業といったエステティック関連産業へも、エステティック産業の健全化の目的や主旨が浸透しやすくなります。

JIS制定の現在の進捗状況

「エステティックJIS」の開発は、2023年秋に経済産業省ヘルスケア産業課及び国際標準課との検討から始まりました。2024年春には国からの受託事業として正式に開発がスタートし、現在は段階的に進められています。
2024年春から業界団体及び関連業界に対してヒアリングを行い、JIS第1次原案を策定しました。その後、ヒアリングに基づいて第1次原案を改訂するとともに、消費者のエステティック需要に関しての意識調査を実施しました。
現在(2025年)時点でJIS第2次原案が策定され、今年度において業界内外からの修正意見を検討して2026年春に最終案が策定される予定です。
最終的には、2026年度にJISC(日本産業標準調査会)の検討を経て経済産業大臣の認可を得る予定となっています。

第2次原案に盛り込まれた具体的な内容

JIS第2次原案では、消費者保護の観点から具体的で実効性のある規定が盛り込まれています。

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